เข้าสู่ระบบ目が覚めるとそこは、見知らぬ旅館の駐車場だった――。
「あの……ずっと寝ていてスミマセンでした。ちなみに、ここはどこなんでしょうか?」 いつの間にか体にかけられていたタオルケットをぎゅっと握りしめがらが、ほっこりした優しさを噛みしめつつ、隣にいる穂高さんの顔を見上げた。 車の目の前にそびえ立つ、豪勢な建物に思いっきり違和感を感じて顔を引きつらせている俺を、妖艶な微笑を浮かべて見つめ返す。 「済まないね。高速道路を走っている最中に急な眠気に襲われたから、途中で仮眠をとったんだよ。気がついたら結構時間が経っていたのもあり、慌ててそこら辺にある旅館に電話して、今夜の宿を確保したというワケ」 「……そう、だったんですか」 流暢な感じで語っていく穂高さんに、窺うような眼差しを飛ばしてみた。サービスエリアで一緒に撮った写真のときも、しっかりとウソをついた人なのだ。 『穂高さんっ、全部ウソだったんでしょ? 俺とイチャイチャしたいからって、ウソついたでしょ?』 「さぁ、設定ミスしただけじゃないかな。たまぁに、調子が悪くなるんだよ」 『それにしては、しっかり綺麗に撮れてますよね。まるで、タイミングを計ったみたいに』 「いやいや、スマイルシャッターの方が可愛い千秋の笑顔が、もっと綺麗に撮れたと思うのだが。残念だな、本当に」 むしろ謀られたような気がする。そのときの穂高さんの顔と今の顔が、見事にリンクしているから。ちょっとだけ目を細めながら、口元に微妙すぎる笑みを浮かべて誤魔化さずに堂々としているのが、更なる疑惑に拍車をかけた。 「夏休み時期なのに、上手いこと予約がとれて良かったと思ってね。千秋が一緒にいるとツイてるな」 シートベルトを外し、後部座席から小ぶりのカバンを掴んで軽快に俺の肩を叩いた。 「疲れただろ? 部屋に露天風呂が付いているからね。そこでゆっくり浸かって、疲れをとるといい」 (――おいおい、可笑しすぎるだろ。夏休みの週末、そんな部屋が都合よくとれるのか!?) 「穂高さんやっぱり……」 「さぁ降りて降りて。計画倒れは残念だけど、こんな旅館に泊まれるのはラッキーだよ」 追い立てるように車から降ろされるなり、腕を引っ張られながら旅館に入った。 渋い顔をした俺を連れ、颯爽とした足取りで真っ直ぐにフロントに向かうと、先に着いたばかりのお客様が、女将さんらしき人と和やかに喋っていた。 「井上様、本日は当旅館にお越しくださり、有り難うございます」 言いながらそのお客様に向かって、深く頭を下げる女将さんらしき人。 「……コイツだったのか」 ボソリと呟いた穂高さんの言葉に疑問を感じ、掴まれてる手にぎゅっと力を入れて訊ねてみる。 「何がコイツなの?」 「あ……予約するときにちょっと、ね――」 ハッとした表情を浮かべて、あからさまに顔を背けた。むぅ、アヤシイ! 「俺たちもアヤシイ客だけど、あっちの井上様も十分にアヤシそうだね」 穂高さんが顔を背けた視線の先には、仲居さんに案内されて目の前を去って行く井上様とそのお連れ様がいた。 井上様と呼ばれていた男性は見た目40代前半ってトコなのに、一緒にいる女性はどうみたって20代前半なんだよな。親子があんな仲睦まじく、腕を組むわけがない。 「予約していた、もうひとりの井上です」 俺からそっと手を離し、営業スマイル全開の穂高さんが女将さんらしき人に向かって朗らかに話しかけると、その魅惑的な笑みにやられたのか頬をぽっと紅潮させた。 ――分かるよ、この人の笑みは否応なしにドギマギさせるから。 穂高さんが宿泊者名簿に記入している最中も、うっとりとした顔して、じっと見つめているその姿に、どうしても文句を言いたくなってしまい、拳を握りしめて堪えた。 『穂高さんは俺のなんです。あまり見ないでいただけますか』 心の中で延々と唱え続けること数回、途中深呼吸をして気持ちを抑えたりもする。モテる穂高さんがけして悪いワケじゃないけど、無駄に神経が擦り切れそうだ。 「お部屋にご案内いたします、どうぞ」 その声に顔を上げると穂高さんが俺の肩に手を回して、押し進めてくれた。 「千秋……」 「……なんですか?」 ぶっきらぼうに答える俺に、どこか嬉しさを滲ませた瞳でじっと見つめながら、肩を抱き寄せた手に力を入れて体を引き寄せると、耳元にくちびるを寄せる。 間髪おかずに告げられた言葉は、不機嫌になっていた心が一気に満たされるもので――。 「ね、千秋はどう思っているんだい?」 聞かなくても分かっているくせに、わざわざ訊ねるなんて本当にイジワルな人だな。 「俺も同じです……」 「どこが同じなんだい?」 くすくす笑っている穂高さんに赤面しながら視線をあげたら、仲居さんがこちらになりますと声をかけてきた。 「ほらほら、仲居さんが説明してくれるみたいだから、ダラダラしたらダメだよ穂高さん」 「毎度のごとく、公共の場ではタイミングが悪いな」 ブツブツ文句を言う彼の背中をぐいぐい押して部屋に入らせてから、ひと通りの注意事項や食事についての説明を受ける。 「では何かございましたら、フロントにお電話くださいませ」 一礼して去って行った仲居さんを見送り、やっとふたりきりになった空間を改めて見渡してみた。和室に置かれている高そうな調度品に用意されているアメニティグッズも、某ブランド品だったり。 「……穂高さん、ここの宿泊費」 「君はそんなことを気にしなくていいから。俺がミスしたせいなんだしね」 (ミスしたせいって、そんな……) 「でもそれは俺が隣でのん気に寝ていたから、穂高さんまで眠くなったんじゃないかって思うんですけど」 眠くなったという彼のウソを事実にするならば、こう言った方が真実味が増す。ウソついてると突っ込むよりも、あえてそのウソにとことん乗っかってみようと思った。 睨むように、穂高さんの瞳を覗き込んでやる。 「参ったね。そんな顔して見つめられたんじゃ、平気な顔してウソを突き通すことができないじゃないか」 「やっぱり! どうしてウソをつくんですか穂高さんっ。高速で一緒に撮った写真のときといい、今といい……」 この人は俺自身がキズつかないようにウソをついた過去があるからこそ、他にも何か理由があれば、しれっとした顔でウソをつくんだ。 「だって千秋の喜ぶ顔が見たかったから、つい」 「だってとか、ついとか、何やってんですか、もう!」 両手で赤いシャツの胸倉をぐいっと掴み、ゆさゆさ揺さぶって俺の怒りを表したというのに、その顔はどこか嬉しげなものだった。 「そうか。千秋にはもう、俺のウソは通用しないってことなんだな」 謝りもせずに、ひょいと肩を竦める。 「というか、もうウソをつくのは止めてください。穂高さんの言ってる言葉が、信用できなくなりますから」 「ウソから出た誠で、そうなったらいいなと思ってね」 「何ですか、それ?」 「実はここに来るまでに、3つのウソをついた」 形のいい眉毛を上げて、堂々と言い放つ姿に呆れ返るしかない。困った人だな、本当に。 「えっと写真を撮るときのウソと、ここに来るのについたウソと、あとひとつは――」 彼から手を離して腕を組みながら、うんうん唸って考えてみた。 「君はそれを見ていないから、きっと分からないと思う」 「見ていないこと?」 「ん……。さっきここにきたときに書いた宿泊者名簿に、千秋の名前を『井上千秋』って書いたんだよ。これもウソになるだろう?」 あ……俺が島で咄嗟についたウソを、この人は――。 ひゅっと息を飲んで、黙ったまま穂高さんを見上げる。そんな俺をぎゅっと強く抱きしめてくれた。 「刑法には引っかからないけど、旅館業法に違反してしまうけどね」 「い、違反っ!?」 抱きしめられた体から穂高さんの熱を感じつつ告げられた言葉に驚いて、その顔をまじまじと見つめてしまった。 「ああ、千秋だけ偽名になってしまうから。この旅館で何かあったときに、名簿を紐解いて履歴を調べられたら、一発で指摘されるかな」 「そんな……」 「大丈夫だよ。軽犯罪だから大したことはないし、それに実際この罰則が使われたことはないって、知り合いの弁護士から聞いている」 ※重い罰ではないけれど仮にこの刑で処罰された場合、市町村の犯罪人名簿には掲載されないものの、検察庁の犯歴記録には「前科」として一生残るので注意です! 「こういう罪を知っているってことは、穂高さんは過去に偽名を使って、ホテルやら旅館を使ったってことですよね?」 藤田さんのお父さんの会社に勤めながら、いろいろ苦労した話を聞かせてもらっていたので、そういうことをしているのは納得済みだけど。 「やれやれ。どうして俺の痛いところばかり、見事に突くんだい?」 少しだけ困った顔して、誤魔化すように俺の頬にちゅっとキスを落とした。 「それは、その……穂高さんの過去も今も全部、知りたいって思うから――」 穂高さんの逞しい体に腕を巻きつけ、ぎゅっと抱きしめ返す。 この人の過去はウソをつくことで成り立っていたところがあるから、平気な顔をしてあれこれウソをつくけれど――ウソをつかれた相手がそのことでどれだけ悲しく思うのか、少しでもいいから分かって欲しかった。 「千秋……」 「もうウソをついて誤魔化したりしないで。俺の寿命が縮んでしまうよ。きりきり舞いするのはたくさんだ」 少しだけ背伸びをして穂高さんのくちびるに押しつけるように、自分のくちびるを重ねて舌を割り入れてあげた。 「くっ、ぅ……」 和室に響く、くちゅくちゅっという水音が俺のしている大胆な行為を、更に助長させる。 甘い声をあげた穂高さんをもっと感じさせようと、顔の角度を変えた瞬間、その行為から逃れるように離されてしまった。 「千秋、さっきから俺のことを責めてる? それとも攻めているのかい?」 「どっちもですよ。呆れまくりです」 じと目をして穂高さんを見上げたら、やっと困った顔して「ごめん」と小さな声で謝ったので、内心ホッとする。 「お詫びに背中を流してあげるよ。そこにある檜の露天風呂と最上階にある展望露天風呂、どっちに入りたい?」 俺を必死に宥めるべく頭を撫でながら訊ねられた言葉に、ニッコリ微笑んで答える。 「ここにある、檜の露天風呂!」 「かしこまりました、お客様。備え付けのタオルは――っと」 ふたりでいそいそ準備して仲良く個室の露天風呂に入ったのだけれど、残念ながらいつものようにイチャイチャして、お風呂に入れなかった。 外の景色は見晴らしのいい大海原がどどーんと展開されていて、空気も澄んでいる上に、すっごい綺麗だったのもあり、わーいと子供のようにはしゃいで騒いでしまったせいじゃなく。 「穂高さん――」 「千秋その……。タイミングが悪かったとしか、言いようがなくて。本当に済まないって思ってる。罰を受けるなら俺だけでいいのに」 ウソをついたのは俺なんだし、とブツブツ言ってる彼の顔に目がけて、両手でお湯をかけた。 「!!」 「楽しもうよ。今日みたいにこうやって、ゆっくりふたりで湯船に浸かれることができないんだからさ。穂高さんチのあのせまぁいお風呂でクロスして入るのを考えたら、長風呂だってできないし」 「折角だから俺はもうちょっと、違う楽しみ方をしたいのにね」 恨めしそうな表情で俺の腰を抱き寄せると、肩口に吸いつきながら甘噛みする。くすぐったいなぁ、もう! 「やめてってば、声が出ちゃう」 「分かってる。くそっ、ツイてないな」 計画通りにいかなかった彼には申し訳ないけど、これはこれで面白い展開だった。。普段あまり見ることのできない穂高さんの表情が貴重すぎて、思わずじっと見つめずにはいられなかった。「チョコが途中で割れないようにぷちぷち包装OK、手紙も入れ忘れしないようにっと」 働いてるコンビニでバレンタインフェアが始まってから、急がなきゃという感じで用意したチョコレート。お酒好きな穂高さんに合わせて、ウィスキーボンボンの詰め合わせを買ってあげたんだ。 ついでといっては何だけど、いつもお世話になってる船長さん用に、日本酒の入ったチョコも添えてみた。分かりやすいように宛名をつけて――。「喜んでくれるといいな、穂高さん」 別れた後だった去年のバレンタイン。大好きなのに渡せなかったからこそ、今年は無駄に力が入ってしまう。「あとは、大手通販会社から取り寄せた『ホットコット』を入れてあげてっと。意外とかさ張っちゃうな」 張り切ったせいで用意していた箱の中が、ぱんぱんになってしまった。 コンビニで販売している雑誌で、新製品を試供しまくり酷評している特集記事を見つけたので、休憩時間に購入して読んでみたら、CMで話題のあの製品の保温率がそんなに高くないことを実験結果で知り、1番あったかい商品として紹介された物を、自分用と穂高さん用に通販で買ってみたんだ。 実際に着てみると、想像以上に着心地がいい上に軽くて温かい――さすがは、ナンバーワンと称されたことはある! 寒空の下、冷たい海の上で仕事をしている穂高さんにピッタリだよね。 温かいことが実証されたので追加注文して、穂高さんの分を数枚購入。通常の商品よりもお財布に優しくて、すごく助かってしまった。「本当はバレンタイン当日、俺があっちに行って直接あたためてあげたら、喜んでくれるんだろうけど」 2月は節分に使う豆や恵方巻き販売、そしてバレンタインと毎週イベントが目白押しで、バイトを休むことが出来ないんだ。「チョコはいいとして、バレンタインにあったか肌着をプレゼントするのは、正直色気がないけれど、あの穂高さんでも俺が体を気遣ってることくらい分かってくれるよね」 あるいは――。『これを脱がせたいから、送ってくれたのかい?』 なぁんて幻聴が聞こえてしまったのは、一体何でだろう?「それを言わせないための、爆弾投入して終了!」 アクセントとして小物入れになってる、キ○ィの顔の形のガラスケースを用意してみた。小物入れ部分には予め、小さなチョコが入っている。食べ終えたら好きな物を入れてくださいねって、手紙に書
*** なんだかんだで夕方までしっかり康弘君に拘束されて、遊び倒してしまった。穂高さん、寂しがっていないだろうか?「寂しさのあまり、康弘くんに嫉妬しなきゃいいけど……ただいま!」 引き戸をガラガラっと開けて大きな声で言ってみたのに、穂高さんが出てこない。それだけじゃなく薄暗い家の中、明かりも付いていない状態だ。「……でも靴はあるから穂高さん、家にいるな。トイレに引き篭もっていたりして?」 あれこれ考えながら引き戸を閉めて靴を脱ぎ、家に足を踏み入れた瞬間だった。「お帰りなさいませ、千秋様。おしぼりをどうぞ!」 居間に続くドアが音もなく開け放たれたと思ったら、ビシッと決めまくった穂高さんが頭を下げながら、ずいずいっとおしぼりを差し出してきた。「ええっ!? な、何……一体」 ――いきなり、何のイタズラなんだよ!?「今宵は千秋様のお相手をさせていただきます、穂鷹(ほだか)と申します。以後、お見知りおきを」 強引におしぼりを手渡され、反対の手には名刺らしきものを握らされた。「……ホストクラブ、ラバーズ、店長兼ホスト、穂鷹。何ですか、これ?」 あまりの展開についていけずに、思いっきり呆れ返るしかない。「慌てふためくことはない、安心してくれ。俺が勝手に、千秋に尽くしたいだけだから」「尽くしたいからって、何でそれがホストクラブになっちゃうの?」「尽くすと言えば、ホストクラブだろう?」(――どうして、そうなる!?)「あのね、穂高さん。俺は普段から、すっごく尽くされまくっているよ。だからこんなことをわざわざしなくても、大丈夫だから!」 おしぼりをぎゅっと握りしめてこうやって力説しても、彼には伝わらない可能性が高い。ちょっとだけ常識とのズレがあるせいで、何度も苦労させられているからこそ分かってしまう事実に、言葉が続かなかった。 焦る俺を見て、何故だか魅惑的に微笑む。この笑みが正直、厄介なんだよな――。「夏休み最後の思い出に千秋には是非とも、ホストクラブの体験をしてほしくてね」 言い淀む俺を尻目に素早く腰を抱き寄せてきて、居間に導いてくれる穂高さん。薄暗い中に、オシャレな形をしたキャンドルが点々と置かれていて、炎を揺らめかせていた。 キャンドルという小物ひとつでムードが漂っている様子を、息を飲んで見つめるしかない。 ――見慣れた部屋が、全然
***『我慢している穂高さん、大人(^^)』 なぁんていう読者さんから、あり難いコメントを戴いたのだが――。 あの時、千秋のパンツ(分身)を手にしていなければ、あんな風に笑っていられなかったと思う。あれがもし自分のパンツだったなら、きっと計画倒れになっていただろう。 ――千秋を外に出さず、ずっと傍にいさせただろうから。 そして現在誰もいない家の中、千秋が着ていたパジャマを手に洗濯機の前に佇んでる俺って……。「早くシーツと一緒に洗濯してやり、外に干さないと乾かなくなってしまうのが分かるというのに、寂しさのあまり手放せないとか」 自分から千秋を追い出しておいて、この有様なのである。思う存分に、パジャマに頬ずりをしてから。「エイ!(*`◇´* )ノ ・゜゜・。」 手荒く洗濯機に向かって放り投げ、音を立てて蓋を閉めてスイッチON! 故にまーったく、大人じゃなかったのです。みんなの期待を裏切ってしまい、大変申し訳ない←見えない誰かに、必死に謝る穂高氏「これで心置きなく、作戦が遂行できる。名付けて『千秋、はじめてのホストクラブ体験☆』」 洗濯機の前から身を翻し、らんらんらん♪とスキップして居間に移動して、引き出しからアロマキャンドルを取り出した。間接照明代わりに使おうと、ちゃっかり用意していたんだ。 どこら辺に配置すればムードが漂うだろうかと、うんうん唸りながら考える。暗すぎても明るすぎても駄目、バランスが大切だからね。 ベストな配置にセットしてからテーブルの前に座り込み、予め用意しておいた名刺くらいの大きさの厚紙を眺めた。「さて、と。ホストクラブの名前を、どんなものにすべきか。千秋が好みそうなものは、何だろうな」 島にいるから『愛らんど』なぁんていうのを考えたのだが、明らかにキャバクラっぽくて笑えない。「ここは安易だが、LOVERS~ラバーズ~で手を打とう!」 義兄さんのネーミングセンスが、実に羨ましい。Paradise(パラダイス)やシンデレラだの、ホストクラブの名前にはピッタリ過ぎる。 ブツブツと独り言を呟きながら厚紙に、店名と名前を書いていった。 他にも必要な物を用意し、千秋がいつ帰って来てもいいように準備する。昔着ていたホスト服を身につけ、髪型もビシッと整えて鏡の前で微笑んでみた。「千秋が楽しめるように、しっかりとサービスし
穂高さんと一緒に線香花火を楽しみ、オマケと称して外でも楽しんでしまい――(穂高さんがコソッと言ったんだ、これはオマケだよって) その後、何故だかキ○ィのパーカーを無理矢理に着せられてしまった。 コスプレさせられた腹いせに家に帰ってから、穂高さんを襲ってやったんだ。押し倒した俺の顔を仰ぎ見る顔が、嬉しそうなことこの上ない!『ほらほら、どうしたんだい千秋? お口も手も、さっきから止まっているが』「やっ、こっ、これからが本番だって」『ほほぅ、本番ね――服を着たままヤろうなんて、さっきの続きをしようと考えていたりするのかい?』 フードに付いてるネコ耳が、ふるふると震えているよ。なんて言われてしまい、ますます恥ずかしくなってしまった。『そんな格好で扇情的な顔をされたんじゃ、ある意味拷問に近い。俺のココが、千秋を求めてるのを分かっているクセに。ワザとこんな風に焦らすなんて』 言いながら、ぐいぐいっと下半身を押し付けてくる。 窓から入ってくる月明かりで穂高さんの表情が、とても切なげにしているが見えても、恥ずかしさを妙に意識してしまってから、指先ひとつすら動かせないとか……。『ね、前と後ろ、どっちからがいい?』「へっ!?」『ネコ耳フードを被ったままの君を、どうしてヤろうかといろいろ考えたのだが。アングル的に、どちらも捨てがたいくらいにオイシイな、と』「……オイシくないです」 何でこれ被ったままスる前提でいるんだ、この人は――『よし、両方試してみようか!』「えぇっ!? ちょっ、待っ――うわぁあっ」 居間の床の上へと俺の身体を簡単にチェンジした穂高さんに、驚いたり呆れたり。『腰が痛くならないように、クッションを敷かないとね。まずは、前からトライしてみようか。千秋の感じる顔、たくさん見たい』「もぅ、たくさん見てるクセに」『何を言ってるんだ。今の姿は、普段見られないものだろ。ただでさえ可愛いのに、そんな格好をしているからどうやって啼かせようか、いろいろ考えてしまってね。ふっ』 しまったと思った時には既に遅く、穂高さんの手によって散々感じさせられ、出なくなるまで絞らされる展開に発展してしまったんだ。 そんな状態だったので目が覚めた時には、お昼近くになっていた。隣で寝ていたであろう穂高さんは、とっくにいなかったのである。「俺なんかよりも充分に
*** ザザーン……ザザーン……パシャッ… さっきまで聞こえなかった波の音が、耳に心地よく響いてくる――それだけじゃなく、火照った身体を冷やしてくれるような気持ちいい風を感じることが出来て、ゆっくりと目をつぶった。「千秋、寝ちゃダメだよ。風邪を引く」 後ろから抱きしめている穂高さんが腕の力を強めつつ、俺の身体を揺り動かす。この温もりがあれば、絶対に風邪なんて引かないと思うのにな。「寝てないよ。ただ感じていたかっただけ、五感全部を使って覚えておきたかったんだ。夏休み、最後の思い出に」「……まだ、感じ足りなかったのかい?」 その解釈の意味が分からない。俺の台詞が、おかしいのだろうか。「もう、感じまくっていたのを知ってるクセに、どうして足りないなんて言えるのかな……」 呆れた声をあげた俺を宥めるためなのか、うなじにキスを落してきた。そのせいで、さっきまでの出来事を思い出してしまう。『くっ…ちあ、き。気持ちいいかい?』『んんっ、はぅ……んぁっ、は、あぁ――』 外でいたしているというのに、容赦のない4点責めに喘ぐことしか出来ない自分。背後から穂高さんの指を口の中に突っ込まれている時点で、マトモな答えが出来るハズがない。『ね、いつもより締めつけているのは、俺を早くイカせようとしているから? すごくっ……キツい、よ千秋』『ひがっ…あぁあぁ、ぅあっ……んっ!』 耳元で囁きながら耳の穴に舌を突っ込み、ぐちゅぐちゅ責め立てるとか本当勘弁してほしい。 前回はお酒の勢いが手伝ったから、いつもよりハメを外してしまったところがあったけど、今は羞恥心が勝っていて、落ち着いてなんていられないというのにな。 それをぶち壊すためなのか、いきなり始まった4点責めで、それをどんどん壊されていった。 穂高さんの右手は俺の舌先を感じるように弄び、吐息をかけながら耳周辺をペロペロしながら、反対の手は俺のをしっかりと握りこんで、ゆっくりと扱いている。 これだけでも充分すぎるくらいなのに更に俺を乱そうと、強弱をつけて中をかき回す穂高さん自身に、どんどん堪らなくなっていったんだ。「んぁっ…ほらか、さ…あひがっ、つらぃ」 ずっと立ち膝の状態でいたせいか、ガクガク震えてきてしまい立っているのがやっとだったので、言葉にならない声を出し哀願してみる。「もう少しだったのに、残念だな
『穂高さんっ、白々しい演技は止めてください。この間は酒の勢いとかいろんなものが手伝ったから、ここでしちゃったけど、もうしませんからね』「何をだい?」『穂高さんってば、もう!!』 テレが頂点に達した千秋がうがーっと声を荒げたので、誤魔化すべく左頬にちゅっと音の鳴るキスをしてあげると、いきなり大人しくなってしまった。「やっぱり可愛いな、千秋は」 何をすれば大人しくなるのか、分かっているモノ勝ちだ。 内心ほくそ笑みながら千秋の手を掴み、そのまま砂浜へと引っ張って行く。ゆったりと歩いて進んで行くと、月明かりに照らされた足元にあるそれが光り輝いた。「おっ、いい物発見」 薄暗がりで仕事をするようになってから夜目が利く様になったお陰で、こういった嬉しい発見が出来ることが増えた。勇んでそれを拾い上げ、見えやすいように千秋の目の前にそっと差し出してあげる。『貝殻?』「ん……。ロウソクの土台に、ピッタリかと思うのだが」『よく見つけましたね? こんな暗い夜なのに』 確かに月が照らしていたといっても、ものすごく頼りなさげな三日月だったが、貝殻が白いお陰もあって、簡単に見つけられたのだと思われる。「キラッと光って見えたから、偶然だよ」『光ったって。目を凝らしても、何も見えないけどな』 渋い顔をし、辺りをキョロキョロする千秋につい――「それは困るな。俺が迷子になったら捜せないじゃないか」 笑いながら告げてみた。貝殻の色と同じ白のパーカーを着てる今なら、千秋にだって捜せそうな気がするけどね。 繋いでいた手にぎゅっと力を入れてから名残惜しげに放して、貝殻にロウソクをセットすべく足元にバケツを置き、ポケットからいつも持ち歩いてるライターを取り出した。 火を点ける様子を同じように屈み込み、膝を両手で抱えながらじっと見守る千秋。『ありがとね、穂高さん』「どういたしまして」 たったこれだけのことにお礼を言ってくれるなんて、律儀だなと思っていたら。『……大好き』 少しだけ照れが混じった言葉を唐突に告げられ、そのまま固まってしまった俺――目の前にあるロウソクの火がゆらゆらと揺らめく状態は、自分の心の中にある火とリンクしていて、手にしていたライターを意味なくぎゅっと握りしめる。 以前は強請らないと言ってくれなかった言葉だったのに、不意に言われてしまうと、体が火