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残り火2nd stage 第2章:波乱万丈な夏休み

ผู้เขียน: 相沢蒼依
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-10-13 08:11:15

目が覚めるとそこは、見知らぬ旅館の駐車場だった――。

「あの……ずっと寝ていてスミマセンでした。ちなみに、ここはどこなんでしょうか?」

いつの間にか体にかけられていたタオルケットをぎゅっと握りしめがらが、ほっこりした優しさを噛みしめつつ、隣にいる穂高さんの顔を見上げた。

車の目の前にそびえ立つ、豪勢な建物に思いっきり違和感を感じて顔を引きつらせている俺を、妖艶な微笑を浮かべて見つめ返す。

「済まないね。高速道路を走っている最中に急な眠気に襲われたから、途中で仮眠をとったんだよ。気がついたら結構時間が経っていたのもあり、慌ててそこら辺にある旅館に電話して、今夜の宿を確保したというワケ」

「……そう、だったんですか」

流暢な感じで語っていく穂高さんに、窺うような眼差しを飛ばしてみた。サービスエリアで一緒に撮った写真のときも、しっかりとウソをついた人なのだ。

『穂高さんっ、全部ウソだったんでしょ? 俺とイチャイチャしたいからって、ウソついたでしょ?』

「さぁ、設定ミスしただけじゃないかな。たまぁに、調子が悪くなるんだよ」

『それにしては、しっかり綺麗に撮れてますよね。まるで、タイミングを計ったみたいに』

「いやいや、スマイルシャッターの方が可愛い千秋の笑顔が、もっと綺麗に撮れたと思うのだが。残念だな、本当に」

むしろ謀られたような気がする。そのときの穂高さんの顔と今の顔が、見事にリンクしているから。ちょっとだけ目を細めながら、口元に微妙すぎる笑みを浮かべて誤魔化さずに堂々としているのが、更なる疑惑に拍車をかけた。

「夏休み時期なのに、上手いこと予約がとれて良かったと思ってね。千秋が一緒にいるとツイてるな」

シートベルトを外し、後部座席から小ぶりのカバンを掴んで軽快に俺の肩を叩いた。

「疲れただろ? 部屋に露天風呂が付いているからね。そこでゆっくり浸かって、疲れをとるといい」

(――おいおい、可笑しすぎるだろ。夏休みの週末、そんな部屋が都合よくとれるのか!?)

「穂高さんやっぱり……」

「さぁ降りて降りて。計画倒れは残念だけど、こんな旅館に泊まれるのはラッキーだよ」

追い立てるように車から降ろされるなり、腕を引っ張られながら旅館に入った。

渋い顔をした俺を連れ、颯爽とした足取りで真っ直ぐにフロントに向かうと、先に着いたばかりのお客様が、女将さんらしき人と和やかに喋っていた。

「井上様、本日は当旅館にお越しくださり、有り難うございます」

言いながらそのお客様に向かって、深く頭を下げる女将さんらしき人。

「……コイツだったのか」

ボソリと呟いた穂高さんの言葉に疑問を感じ、掴まれてる手にぎゅっと力を入れて訊ねてみる。

「何がコイツなの?」

「あ……予約するときにちょっと、ね――」

ハッとした表情を浮かべて、あからさまに顔を背けた。むぅ、アヤシイ!

「俺たちもアヤシイ客だけど、あっちの井上様も十分にアヤシそうだね」

穂高さんが顔を背けた視線の先には、仲居さんに案内されて目の前を去って行く井上様とそのお連れ様がいた。

井上様と呼ばれていた男性は見た目40代前半ってトコなのに、一緒にいる女性はどうみたって20代前半なんだよな。親子があんな仲睦まじく、腕を組むわけがない。

「予約していた、もうひとりの井上です」

俺からそっと手を離し、営業スマイル全開の穂高さんが女将さんらしき人に向かって朗らかに話しかけると、その魅惑的な笑みにやられたのか頬をぽっと紅潮させた。

――分かるよ、この人の笑みは否応なしにドギマギさせるから。

穂高さんが宿泊者名簿に記入している最中も、うっとりとした顔して、じっと見つめているその姿に、どうしても文句を言いたくなってしまい、拳を握りしめて堪えた。

『穂高さんは俺のなんです。あまり見ないでいただけますか』

心の中で延々と唱え続けること数回、途中深呼吸をして気持ちを抑えたりもする。モテる穂高さんがけして悪いワケじゃないけど、無駄に神経が擦り切れそうだ。

「お部屋にご案内いたします、どうぞ」

その声に顔を上げると穂高さんが俺の肩に手を回して、押し進めてくれた。

「千秋……」

「……なんですか?」

ぶっきらぼうに答える俺に、どこか嬉しさを滲ませた瞳でじっと見つめながら、肩を抱き寄せた手に力を入れて体を引き寄せると、耳元にくちびるを寄せる。

間髪おかずに告げられた言葉は、不機嫌になっていた心が一気に満たされるもので――。

「ね、千秋はどう思っているんだい?」

聞かなくても分かっているくせに、わざわざ訊ねるなんて本当にイジワルな人だな。

「俺も同じです……」

「どこが同じなんだい?」

くすくす笑っている穂高さんに赤面しながら視線をあげたら、仲居さんがこちらになりますと声をかけてきた。

「ほらほら、仲居さんが説明してくれるみたいだから、ダラダラしたらダメだよ穂高さん」

「毎度のごとく、公共の場ではタイミングが悪いな」

ブツブツ文句を言う彼の背中をぐいぐい押して部屋に入らせてから、ひと通りの注意事項や食事についての説明を受ける。

「では何かございましたら、フロントにお電話くださいませ」

一礼して去って行った仲居さんを見送り、やっとふたりきりになった空間を改めて見渡してみた。和室に置かれている高そうな調度品に用意されているアメニティグッズも、某ブランド品だったり。

「……穂高さん、ここの宿泊費」

「君はそんなことを気にしなくていいから。俺がミスしたせいなんだしね」

(ミスしたせいって、そんな……)

「でもそれは俺が隣でのん気に寝ていたから、穂高さんまで眠くなったんじゃないかって思うんですけど」

眠くなったという彼のウソを事実にするならば、こう言った方が真実味が増す。ウソついてると突っ込むよりも、あえてそのウソにとことん乗っかってみようと思った。

睨むように、穂高さんの瞳を覗き込んでやる。

「参ったね。そんな顔して見つめられたんじゃ、平気な顔してウソを突き通すことができないじゃないか」

「やっぱり! どうしてウソをつくんですか穂高さんっ。高速で一緒に撮った写真のときといい、今といい……」

この人は俺自身がキズつかないようにウソをついた過去があるからこそ、他にも何か理由があれば、しれっとした顔でウソをつくんだ。

「だって千秋の喜ぶ顔が見たかったから、つい」

「だってとか、ついとか、何やってんですか、もう!」

両手で赤いシャツの胸倉をぐいっと掴み、ゆさゆさ揺さぶって俺の怒りを表したというのに、その顔はどこか嬉しげなものだった。

「そうか。千秋にはもう、俺のウソは通用しないってことなんだな」

謝りもせずに、ひょいと肩を竦める。

「というか、もうウソをつくのは止めてください。穂高さんの言ってる言葉が、信用できなくなりますから」

「ウソから出た誠で、そうなったらいいなと思ってね」

「何ですか、それ?」

「実はここに来るまでに、3つのウソをついた」

形のいい眉毛を上げて、堂々と言い放つ姿に呆れ返るしかない。困った人だな、本当に。

「えっと写真を撮るときのウソと、ここに来るのについたウソと、あとひとつは――」

彼から手を離して腕を組みながら、うんうん唸って考えてみた。

「君はそれを見ていないから、きっと分からないと思う」

「見ていないこと?」

「ん……。さっきここにきたときに書いた宿泊者名簿に、千秋の名前を『井上千秋』って書いたんだよ。これもウソになるだろう?」

あ……俺が島で咄嗟についたウソを、この人は――。

ひゅっと息を飲んで、黙ったまま穂高さんを見上げる。そんな俺をぎゅっと強く抱きしめてくれた。

「刑法には引っかからないけど、旅館業法に違反してしまうけどね」

「い、違反っ!?」

抱きしめられた体から穂高さんの熱を感じつつ告げられた言葉に驚いて、その顔をまじまじと見つめてしまった。

「ああ、千秋だけ偽名になってしまうから。この旅館で何かあったときに、名簿を紐解いて履歴を調べられたら、一発で指摘されるかな」

「そんな……」

「大丈夫だよ。軽犯罪だから大したことはないし、それに実際この罰則が使われたことはないって、知り合いの弁護士から聞いている」

※重い罰ではないけれど仮にこの刑で処罰された場合、市町村の犯罪人名簿には掲載されないものの、検察庁の犯歴記録には「前科」として一生残るので注意です!

「こういう罪を知っているってことは、穂高さんは過去に偽名を使って、ホテルやら旅館を使ったってことですよね?」

藤田さんのお父さんの会社に勤めながら、いろいろ苦労した話を聞かせてもらっていたので、そういうことをしているのは納得済みだけど。

「やれやれ。どうして俺の痛いところばかり、見事に突くんだい?」

少しだけ困った顔して、誤魔化すように俺の頬にちゅっとキスを落とした。

「それは、その……穂高さんの過去も今も全部、知りたいって思うから――」

穂高さんの逞しい体に腕を巻きつけ、ぎゅっと抱きしめ返す。

この人の過去はウソをつくことで成り立っていたところがあるから、平気な顔をしてあれこれウソをつくけれど――ウソをつかれた相手がそのことでどれだけ悲しく思うのか、少しでもいいから分かって欲しかった。

「千秋……」

「もうウソをついて誤魔化したりしないで。俺の寿命が縮んでしまうよ。きりきり舞いするのはたくさんだ」

少しだけ背伸びをして穂高さんのくちびるに押しつけるように、自分のくちびるを重ねて舌を割り入れてあげた。

「くっ、ぅ……」

和室に響く、くちゅくちゅっという水音が俺のしている大胆な行為を、更に助長させる。

甘い声をあげた穂高さんをもっと感じさせようと、顔の角度を変えた瞬間、その行為から逃れるように離されてしまった。

「千秋、さっきから俺のことを責めてる? それとも攻めているのかい?」

「どっちもですよ。呆れまくりです」

じと目をして穂高さんを見上げたら、やっと困った顔して「ごめん」と小さな声で謝ったので、内心ホッとする。

「お詫びに背中を流してあげるよ。そこにある檜の露天風呂と最上階にある展望露天風呂、どっちに入りたい?」

俺を必死に宥めるべく頭を撫でながら訊ねられた言葉に、ニッコリ微笑んで答える。

「ここにある、檜の露天風呂!」

「かしこまりました、お客様。備え付けのタオルは――っと」

ふたりでいそいそ準備して仲良く個室の露天風呂に入ったのだけれど、残念ながらいつものようにイチャイチャして、お風呂に入れなかった。

外の景色は見晴らしのいい大海原がどどーんと展開されていて、空気も澄んでいる上に、すっごい綺麗だったのもあり、わーいと子供のようにはしゃいで騒いでしまったせいじゃなく。

「穂高さん――」

「千秋その……。タイミングが悪かったとしか、言いようがなくて。本当に済まないって思ってる。罰を受けるなら俺だけでいいのに」

ウソをついたのは俺なんだし、とブツブツ言ってる彼の顔に目がけて、両手でお湯をかけた。

「!!」

「楽しもうよ。今日みたいにこうやって、ゆっくりふたりで湯船に浸かれることができないんだからさ。穂高さんチのあのせまぁいお風呂でクロスして入るのを考えたら、長風呂だってできないし」

「折角だから俺はもうちょっと、違う楽しみ方をしたいのにね」

恨めしそうな表情で俺の腰を抱き寄せると、肩口に吸いつきながら甘噛みする。くすぐったいなぁ、もう!

「やめてってば、声が出ちゃう」

「分かってる。くそっ、ツイてないな」

計画通りにいかなかった彼には申し訳ないけど、これはこれで面白い展開だった。。普段あまり見ることのできない穂高さんの表情が貴重すぎて、思わずじっと見つめずにはいられなかった。

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